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#5「SPANX創業者サラ・ブレイクリーに学ぶ、ゼロから大企業を作る秘密」

目次

サラ・ブレイクリーってどんな人?

サラ・ブレイクリー:画期的な女性下着を開発し、10年で世界的大企業SPANXを作り上げた若手女性起業家。

アメリカ人なら誰でも知っている女性下着ブランド、SPANX(スパンクス)。

着心地の良さと機能性の高さを追求した画期的なデザインで全米にブームを巻き起こし、ハリウッド・セレブ御用達の高級ブランドとしての地位を確立しました。

そのSPANXの創業者が、今回ご登場いただくサラ・ブレイクリー氏です。

驚くべきことに、彼女はビジネス・スクールに通ったこともなければ、ファッション業界で働いていた経験もありません。

彼女が持っていたのはただ、「女性の生活を改善させたい」という純粋な情熱でした。

そんな彼女がいかにして、一つのアイデアを形にし、売り込み、世界的大企業へと成長させていったのか。

今回はその秘密に迫っていきます。

サラ・ブレイクリー氏の成功の鍵

①「問題解決」に向かって、無限の工夫を積み重ねる

サラの発明の原点にあるものとは

サラの発明家人生の発端

サラの最初の発明は、市販のパンストの太ももの部分だけを残して切り取っただけの「Footless Pantyhose」というアイデア商品でした。

当時、既存の女性下着の使い心地に不満を感じ、自分の体型にもコンプレックスを感じていたサラは、ある日パーティーに行く際に、パンストの先端を切り取って使用するというアイデアを思いつきます。

その使い心地が予想以上に良かったことから、サラは友人たちにも勧めて感想を聞き、意外なニーズがあることに気がつきます。

「その時初めて疑問に思ったの。『今お店で売っている女性下着は、誰が作っているんだろう?』って」

近所の製造工場を早速訪れ、従業員を見て納得。

女性下着を製造する工場で働くスタッフは全員、男性だったのです。

(このままだと、本当の意味で女性が心地よく着れる下着はいつまで経っても現れない。自分がその最初になってみせるわ)

発明は「好きなものの好きなところを組み合わせる」ところから

その日から、サラの発明家としての人生が始まります。

しかし「発明家」と言っても、何か新しいものをゼロから作り出すような無謀な試みはしません。

「全ての発明の原点は、自分が大好きなものの大好きなところを組み合わせるところから始まると思うの」

サラが例としてあげるのは、スティーブ・ジョブズが作ったiPhoneの例です。

ジョブズは「カメラ」「電話」「インターネット」という、既存の技術を新しい形で組み合わせることで、誰も見たことのない新商品を発明しました。

同じように、サラの発明も、すでに市場を出回っている下着の「いい部分」を掛け合わせることで出来上がったのでした。

発明は進化し続ける

サラは、一度作った商品をそのまま市場に送り出すことはしません。

まず身近な友人や家族に試してもらい、感想を徹底的に聞き出し、フィードバックを反映することで商品を改良していきます。

さらに商品がある程度完成した後も、「パッケージの質感や見た目はどうか」「輸送のしやすい形になっているか」などとあらゆる観点からシビアな観察を加えます。

驚くことに、この改善のプロセスは、商品が店頭に並んでからも終わりません。

最初の商品を送り出した後、サラは一日に8時間デパートの店頭に立って販売を行って顧客からの直接の反応を聞き出し、商品を改良していく作業を2年間続けました。

「あの時、デパートに商品を送ってそれで終わりにしていたら、半年以内に商品は送り返されて、SPANXは潰れていたと思うわ」

絶え間ないフィードバックと改良の繰り返しのプロセスこそが素晴らしい発明を生むということを、サラは後ろ姿で教えてくれています。

営業職出身ビリオネアが明かす、最強のセールス術

売るものは「プロダクト」より「プロブレム」

サラはSPANXを立ち上げる以前、プリンターの販売の仕事を7年間続けていました。

そこで掴んだセールスのコツが、自社製品の売り込みの際にも大きく役立っていると言います。

「売るのはプロダクトじゃなくて、プロブレムよ」

『Masterclass』より

サラの営業は、商品の紹介からではなく、「問題意識」の共有から始まります。

「こういう場面でお困りになったこと、ありませんか?」

通りかかったお客さんが、「言われてみれば確かに…」と立ち止まったら、そこがチャンス。

次のステップは、「この商品があなたが抱えているその問題を解決してくれますよ」ということを説明すること。

でもこの時点では、お客さんは購入に踏み切りません。

「確かにその商品が良いものだっていうことはわかったけど、他の商品じゃダメなの?」という疑問があるからです。

そこで最後のステップがやってきます。それは、「なぜそれがベストな選択肢なのか」を説得すること。

ここまできて初めて、お客さんは喜んで商品を買っていくのです。

サラがいつも行っていたエクササイズ

このセールス・トークの中で一番難しいプロセスは、最後の「なぜそれがベストなのか」を説明する部分です。

お客さんに本当にそれを納得してもらうには、まず自分が競合他社の全ての製品を検討した上で、「それでもやはりこれがベストだ」という確信を掴まなければいけません。

そのためにサラがいつも行っていたエクササイズがあると言います。

それは鏡の前に向かって、ある質問を自分に問いかけるというもの。

「Why am I different?(私は他とどう違うの?)」

この質問に対して、「Maybe…」や「I think…」といった曖昧な言葉を使わず、「I know…」で答えられるようになったら、お客さんを説得できるようになる日はすぐそこだそうです。

顧客もライバルも仲間に変えるマインドセットとは

サラの発明の原点は「問題を解決すること」にあるので、「競合他社」と言われる人たちも「同じ問題に取り組んでいる仲間」として考えていきます。

サラが最初の発明をした際も、既存の女性下着メーカーの工場を複数訪れ、彼らがどのように女性からのクレームに対処しているかを聞き出しました。

「彼らも彼らなりに頑張っているけど、彼らが持っていない視点を私は持っている。だから私が最高のソリューションを提案できる立場にあることを、そのとき確信したの」

SPANXが軌道に乗った頃に行ったパーティーで、同業他社のビジネスマンが耳元でこのように囁いてきたと言います。

「ビジネスは戦争だぞ」

甘く見るなよ、という忠告だったのでしょう。

サラは自宅に帰ってからもこのセリフが頭から離れなかったと言います。

「その時に私は決意したの。男性原理で支配されたビジネスの世界でも、女性のやり方が通用するってことを証明してみせるって」

サラの考え方の基本にあるものは、「競争」ではありません。

気づかれていない問題を発見し、それに対してより良い解決策を提示すべく「協力」し「切磋琢磨」してくこと。

この「調和」の原理こそが、サラの企業家精神の原点にあるからこそ、SPANXは全世界の支持を得ることができたのではないでしょうか。

②「NO」を「YES」に変える心の力

サラの人生の指針となった、ウェイン・ダイアー博士の名著

サラがまだティーンエイジャーだった頃、仲の良かった友人が突然の交通事故で亡くなってしまいます。

また同じ頃、追い討ちをかけるように、サラの両親が離婚します。

「どうして私ばっかり、こんな目に遭わなければいけないの?」

嘆き悲しむサラは、部屋にある一冊の本に心の救いを求めました。

それは父親が別れ際に渡してくれた本、ウェイン・ダイアー博士による自己啓発書『How to be a limitless person(未邦訳)』でした。

(そっか、どんな事態に直面しても、「それをどう考えるか」を選ぶのは私の自由なんだ!)

ダイアー博士の教えに触れてから、サラの人生が大きく変わり始めます。

「全てはセルフ・コーチングから始まるの。自分の頭に『考え方』(How to think)を教え込むのよ」

『Masterclass』より

彼女は大学時代、ずっとあるビジョンを抱き続けました。

それは、アメリカで最も有名な女性テレビ司会者の一人であるオプラ・ウィンフリーの番組に出演するというビジョン。

サラは心の中で繰り返し繰り返しそのビジョンを抱き続け、ついに十年以内にその夢を実現します。

「『できない』とか、『自分はそういう人間じゃない』とか、そういう自己不信(Self-Doubt)と戦っていかなければいけないの」

『Masterclass』より

「『NO』は最大の褒め言葉」

父親との思い出で、サラの記憶に強く残っているものがもう一つあります。

それは、夕食の席で必ずと言っていいほど父親が聞いてきた、「今日はどんな失敗をしたんだい?」という質問。

サラが学校でひどい失態をやらかしたことを打ち明けると、父親はそれを嬉しそうに聞いていたと言います。

「あの時私の父親は、私の中の失敗の定義を変えようとしていたの(Redefine Failure)。失敗は挑戦したという証で、挑戦しないことより大きな失敗はないことを私に教えようとしていたんだと思うわ」

『Masterclass』より

この経験を生かして、サラは今でも会社で定期的に「Oops Meeting(ウップス・ミーティング)」という変わった会議を開きます。

それは、「自分が失敗して、思わず『Oops!』(しまった!)と叫んでしまったような経験をみんなと共有する」というというもの。

こうした工夫をすることで、「失敗は恐れるべきものではなくて、本当に恐れるべきは失敗を恐れて何もしないことなのだ」ということを企業文化として社員に教えようとしているのです。

また同様に、人から言われる「NO」という言葉もサラにとっては痛くも痒くもありません。

「私にとってNOは最大の褒め言葉よ」

『Masterclass』より

何かアイデアを提案したとき、それが相手にすぐに受け入れられることもあれば、「NO」と言われて突き返されることもあります。

私たちの多くは、一度「NO」を言われると、「そうですか」と思って引き下がってしまいますよね。

でも、サラにとってはそこからがスタートです。

「だって、NOと言われるということは、それだけみんなが思いつきにくい、希少価値の高いアイデアだということじゃない」

『Masterclass』より

不可能を可能にする魔法は「褒め言葉」と「ユーモア」にあり

人からの「NO」を跳ね返す鋼のメンタルがあったとしても、そのままにしておいたらビジネスはうまくいきません。

サラは、相手から一度突きつけられた「NO」を、「YES」に変えていくための魔法の力を持っています。

「一度『NO』を『YES』に変えるコツを掴んでしまえば、それを使ってどんな場面にも応用していけるのよ」

『Masterclass』より

新商品開発の現場では、サラは何度も製造業者たちに「NO」を突きつけられたと言います。

「このストッキングのここの縫い目が穿いてて痛いから、ちょっと移動したりすることはできない?」

「このブラの後ろの部分の素材をもうちょっと柔軟性の高い生地にしたいんだけど、無理かな?」

製造業者の答えは大抵の場合、次のようなものです。

「それは慣習に反するから無理だ」

「その作り方は生産効率が悪いから採用できない」

サラの提案を聞いて商品を実際に作る製造業者は、男性ばかりです。細かい肌触りに関する意見よりも、「どう作った方が効率がいいか」「今までどうやって作ってきたか」という作り手側の視点にこだわりがちなのです。

そんな時、サラは「褒め言葉」を使います。

「私はあなたたちの技術を信頼してるの。このくらいの改良だったら、きっとあなたたちの優れた技術を使ったらできちゃうんじゃないかな、と思って……無理かしら?」

「……しょうがないなあ、やってやるか」

職人気質の製造業者のプライドをくすぐり、「その気」にさせてしまうサラの魔法の力、恐るべしです。

「相手の中に潜在的に眠っている、『人を助けてあげたい』と思う善なる性質を引き出すの」

『Masterclass』より

どんな難しい交渉でも、サラはこの技術を使って、自分も相手も喜ぶ方向に着地させます。

サラからのもう一つのアドバイスは、実は「ユーモア」。

「相手を笑わせてしまえば、こっちの勝ちよ」

③急速な成長を支える、堅実なマインドセット

製造、販売、雇用、…あらゆる場面で大切になる「堅実さ」

10年で世界的大企業を作り上げた若手女社長と聞いたら、「危険な賭けを犯して発展だけを追い求めたのではないか」と憶測してしまうかもしれません。

しかし、若手起業家に対するサラのアドバイスを聞くと、サラがあらゆる場面において、極めて堅実な考え方を大事にしていることがわかります。

私は起業してからもしばらくは、プリンター販売の仕事を続けていたわ。きっぱりと辞めたのは、SPANXが軌道に乗って、安定が確保できた後の話なの

例えば、製造の場面。

ラインアップの拡大を考えている起業家に対して、サラは一つの「目玉商品」に焦点を絞ることの大切さを力説します。

「いきなりラインアップを広げすぎると、何を売りにしている会社なのかがわからなくなってしまうわ」

SPANXはというと、一年半に一度、「目玉商品」を開発して大規模なキャンペーンを行い、それ以外については比較的抑えめにラインアップを調整していることがわかります。

得意分野である販売の場面においても、サラは堅実です。

大規模な売り込みを考える若手起業家に対し、サラは釘をさします。

「まず一つの店で成功事例を作るの。そうしたら、他の店舗にもそのやり方を広げていけばいいわ」

サラ自身、最初の商品を売り込む際は、一つのデパートの店舗に常駐して2年間そこで直接販売を続けました。

また、雇用に際してもサラは慎重です。

急拡大するスタートアップ企業を率いる若手起業家から、企業文化を維持しつつ会社を拡大していく秘訣を聞かれて、サラは次のような言葉を贈ります。

「雇う際はゆっくり、クビにする際は素早く(Hire Slow, Fire Fast.)」

サラ自身が初めて人を雇った際は、自分の苦手分野を補強するために(Fill the void)どうしても必要な三人の人間を雇ったと言います。

「採用がうまくいくのは、どんなに頑張っても五割よ。そこは割り切って考えるのも大事なんじゃないかしら」

SPANX創業者が就職面接で尋ねる四つの質問

では、サラは採用の現場においてどんな基準を使っているのでしょうか。

サラが社員を採用する際の面接において尋ねる質問は、大抵の場合次の四つになると言います。

1、あなたという人間を三つの言葉で表すとしたら何ですか?

2、あなたの最大の弱みを三つ教えてください。

3、もし100万ドル手に入ったら何をしますか?

4、五年後にあなたはどこにいますか?

1については、アナ・ウィンター氏も言っているように、「自分はどんな人間であるか」を掴んでいる人間に魅力を感じるからだと言います、

また、2については、「弱みを一つ言えと聞かれたら、『頑張りすぎる』とか言って長所を裏返してごまかせるけど、『三つ言え』の場合一つは本物が混じる」という意図を打ち明けています。

3と4は、どちらもサラが大切にする「心の力」と関係する質問でしょう。

自分のあるべき未来像について明確なビジョンを持っていることが、サラが採用の場面において最も重視している資質なのです。

サラ・ブレイクリーの勇気の源泉はどこにあるのか

サラの発明の出発点は、「女性の生活をよくしたい」という純粋な思いにあります。

そうした自分の使命感に出会うために、サラは次のような方法を用いたと言います。

ノートに三つの円を書いて、それぞれに『自分の得意なこと』『好きなこと』『世界にどんな形で役に立ちたいか』を書き込むの。その三つが交差するところに、あなたのやるべき仕事があるわ

最初の二つは簡単でも、最後の一つはなかなか思い浮かび難いかもしれません。

そんな方へのサラのアドバイスはこちら。

「自分の胸が一番痛むのはどんな時かを考えるの」

サラの場合それは、女性が男性の下に置かれ、劣悪な扱いを受けている状況を目の当たりにした時でした。

「社会における女性の立場を高めたい」、「女性がもっと女性らしく幸せに生きられる社会を作りたい」、そんな情熱に突き動かされてSPANXを大きくしていったサラ。

「企業家の生活は、毎日が苦しいことの連続よ。でも、それを乗り越える勇気は『感謝』から出てくるの。自分が自分でいることに対する感謝、与えられた全てのチャンスに対する感謝。私は自分の成功体験をこうやってみんなと共有できる瞬間が最高に幸せなの」

まとめ

さて、以上の三点をまとめましょう。

1、「NO」を「YES」に変える心の力

2、「問題解決」に向かって、無限の工夫を積み重ねる

3、急速な成長を支える、堅実なマインドセット

サラ・ブレイクリーからの最後の一言

私にできたなら、あなたにもできるはず。(If I can do it, so can you.)

自己変革への第一歩

自分を三つの言葉で表してみる。

今、サラ・ブレイクリー氏があなたの目の前に立って、採用面接を行なっています。

「あなたを三つの言葉で表すとしたら、何ですか?」

あなたはこの質問に対して、どのように答えますか?

もし、今の自分について答える言葉がないとすれば、あなたが思い描く「理想の自分」を三つの言葉で表してみましょう。

ノートに三つの円を描き、「自分の好きなこと」「自分の得意なこと」「世界にどう役に立ちたいか」を書き出す。

考えやすいものからで結構です。

「自分の好きなもの」「自分の得意なもの」「世界にどのように役に立ちたいか」を書き出してみて、交差する部分がないか探しましょう。

最後の質問は、「自分の心が痛むのは、どんな光景に接したときか」という質問に置き換えてみても構いません。

自分が作ろうとしているものと似ている商品を三つ見つけ、それぞれの長所と短所を分析する。

どんな新しい発明をしたと思っても、世界にはすでにあなたと同じようなことを思いついている人間が存在します。

でも、だからと言って、「何だ、ツマンネ」といって投げ出す必要はありません。

似た商品を三つ探し、それらの長所と短所を正確に分析しましょう。

その上で、三者の「いいとこ取り」をできないか考えます。

それを可能にするアイデアを思いついた時点で、もうすでにあなたは「発明者」になっているのです。

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1件のコメント

  1. […] 多くの場合において、採用面接の際に尋ねる質問には社長の性格が顕著に現れます。(SPANXのサラ・ブレイクリーの場合を思い出してみましょう) […]

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